幻の魔女へ

 水曜担当の加田です。
 結局、ブログ担当原稿は、公演までに間に合いませんでした。本当にすいません。
 公演は3月1日に終わりましたが、担当回の役目を果たしたいので、最後のブログをアップさせていただきます。

 千秋楽の回には、私の知っている方、知らない方含め、この劇団の関係者の方たちもたくさん観に来ていました。その中に彼女もいました。
 彼女は、今回の公演に当初出演する予定でした。前回の『リア王』では、私が演出したオープニング部分のキーマンとして好演してくれた女優さんです。彼女とまた一緒にお芝居ができることを楽しみにしていました。
 ところが、稽古が始まる直前、彼女は体調を崩し、結局、参加を断念。その時点では、まだ配役は決まっていませんでしたが、主宰の青柳さんと私は、私が演出を担当する魔女三姉妹の1人を演じ、踊ってもらうつもりでした。彼女は長年、ダンスをやっているので、私の身体表現とミックスして、なにか新しいことができるのではないかと、いろいろと構想をめぐらせていました。
 彼女が出演できないということで、構想は振り出しへ。私は、魔女3人を三重人格の魔物として、1人で演じるつもりでいました。配役決定ギリギリまでその方向で考えていましたが、青柳さんとも相談した上でさまざまなことを考慮し、最終的には、若い女優2人とともに演じることになりました。いま思えば、それで正解だったと思います。私ひとりでは、どこかで壁にぶつかっていたでしょうし、20代の2人の女優たちは予想以上にいろいろなものを引き出してくれましたから(この2人のがんばりについては、前回のブログに書きました)。
 ただ、稽古中、脳裏にはいつも参加できなかった彼女のことがありました。彼女とやっていたらどういうものになっていたのか、どんな演技や表現を見せてくれたのか――。

 だから、公演を見た彼女に会って、いろんなことを話したいと思ってました。
 終演後、客席から出てきた彼女と目が合いました。すると、彼女は突然泣き出したのです。少し驚きましたが、その表情から、なんとなく気持ちは伝わってきました。
 彼女と別れたあと、彼女はそのときのことをメールで伝えてきました。「(会えた)嬉しさと、できなかったことの悔しさがいろいろつまって涙腺が崩壊した」と。この数ヶ月いろいろあったのだと思います。
 なにはともあれ、元気になった彼女の姿を見れたことで、一安心しました。

 彼女は、この3月に芸術系の大学を卒業します。「表現の世界」で自分のやりたいことを突き詰めていくつもりだと聞いています。
 ただ、それは、茨の道です。とくに、この数ヶ月で彼女はいろいろなものを失ったと思いますので、いまは逆境にあるといっていいかもしれません。「卒業」の先は決して明るいとはいえないでしょう。
 彼女がその逆境を乗り越える課程で、なにか一緒にできれば、そしてなにか力を貸すことができれば、といま思っています。
 負けるな。“明けない夜はない”のだから。

◆本日のシェイクスピアの名言・名台詞◆

 「逆境が人に与えるものこそ美しい」

作・加田斎
代筆・天真大貴

〜天真の勝手にコメント〜
今回出演出来なかった事は彼女の心に残ると思います。ですが、その悔しさですら生きる力に変えて頑張って欲しいですね。
これからの彼女の頑張りに期待!

幻の魔女へ」への1件のフィードバック

  1. 幻の魔女さん…出演出来なくて残念でしたね。もう大学も卒業ですか…。確かに卒業した先が明るいとは限りません。私が在籍していたミュージカル専門学校では、私の同級生は私ともう一人以外は未だにオーディションに合格出来ず…アルバイト生活しています。どんなにダンスが出来ても、歌が出来ても、演技が出来ても合格させてもらえない業界。毎回審査員が今回何を求めているかを感じて、オーディションに望みなさいと今の職場の上司に言われました。私の同級生(現在超有名劇団入団3年目の子)は「劇団に入ったら、ハートが凄く強くなきゃすぐ辞めることになるよ〜。人間関係は、意外とブラックだから。」と教えられ劇団に恐怖感が出ました。幻の魔女さんも、舞台人として「今度舞台出演」が決まった瞬間から体調には本当に気をつけないとダメですよ〜。プレッシャーが凄いとすぐ身体と心のバランスを崩す人とかいますが、とにかく健康面は一番重要です!劇団に就職しようと普通の会社に就職しようと、体調は一番大切です。年に一回しっかり健康診断を受け、生活週間を見直して健康的な日々を過ごしてください。※姫は年に2回、健康診断受けております。仕事先に「体調悪くてキャンセル」なんてこと絶対言えないので(>_<)劇団員の皆様もスタッフの皆様も、出演が決まった時から千秋楽終わるまで健康面と喉には十分お気をつけくださいませm(__)m

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